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名古屋大学大学院

エルサレムの帰属問題

エルサレムという地域は現在でも宗教的な対立が混在し、「エルサレムの旧市街とその城壁」として世界文化遺産に登録されているが、遺産保有国は唯一実在しないエルサレムとなっている。なお、パレスチナイスラエルの紛争に加え、急激な都市開発の進行、観光客増加による被害、維持管理費の不足等を理由として1982年に危機遺産リストに追加されている。

エルサレムは、3つの宗教であるユダヤ教キリスト教イスラム教にとって宗教的に重要な聖地とされている。

歴史としては、エルサレムダヴィデによって古代イスラエル王国の首都とされていた。ダヴィデの跡継ぎであるソロモンは街の中心部にあるモリヤの丘に「十戒」を納めた神殿を建築した。十戒とはユダヤ教唯一神ヤハウェモーセに与えたとされる。エルサレムは宗教的かつ政治的にユダヤ人の中心地となる。しかしながら、後70年にはローマ軍によって市街と神殿が破壊された。ユダヤ人は神殿のあった丘から追放されて故国を失い、世界各地に離散(ディアスポラ)せざるを得ない状況となった。ローマ軍侵攻後、キリスト教徒にとってもイエス・キリストが十字架に処された地としてエルサレムは重要な聖地となる。加えて、638年にこの地がイスラム軍に占領され、1099年に十字軍によってキリスト教の手に戻り、1187年にはサラディンによってふたたびイスラム教の聖地に戻り、20世紀初頭までイスラム教の支配下にあった。ただ、このような紛争により多くの神殿や礼拝堂が失われた。帰属問題は現在でも残りエルサレム第一次中東戦争にて東西に分割、旧市街の東エルサレムはヨルダン領、新市街の西エルサレムイスラエル領とされた。このように領土の帰属問題は現在でも存在する。紛争の舞台となった3宗教の聖地でありトランプ氏のように都合よく大使館をエルサレム移転など、中東の緊迫化をそそのかしてはならない。中東和平にアメリカの役割は欠かせず、次の大統領選には私は固唾を呑むばかりである。